「貴方たちもそうなんでしょう?」


そう言って、六道骸は微笑んだ。

誰も何も言わない。


「僕は、確かにそう思いましたよ。の全てを奪った彼をそう思いました」


彼は、の喜び、楽しみ、怒り、悲しみ、苦しみ、その全てを共に感じることができた。

愛しい人の感じるもの全てを自分が一緒に感じることができる。

なんて幸せなことだろう。

そして、彼は誰よりも彼女を傷つけ、そして最後に自分の命を捧げることで、彼女の心に自分の存在を植えつけた。

それは、なんと幸せで羨ましいことか!

やや大げさなくらいに両手を振り上げ、骸は笑う。


「でも、それは、とても自分勝手だな」


笹川了平は、耐え切れなくなったように口を開いた。

優しい彼に似合う、悲痛そうな声だった。


「そうだな、ただの自己満足だな」


山本武が相槌をうつ。


「恋や愛なんて感情、結局はそれ自体が自己満足じゃないか」


雲雀恭弥が山本を一瞥し、山本は肩を上げて、その言葉への返答とする。


「それで、今、さんは何処に…?」


おずおずと、ランボが口を挟む。


「…自室に運んだ」


素っ気無く言葉を発したのは獄寺隼人だった。

しかし、その素っ気無さはランボに向けたものでないことくらい誰にでも分かった。


「ハルが付き添っている。シャマルによると起きる見込みがつかないそうだ」


冷静にリボーンが告げ、あれだけ精神に負担を受けたのだからな、と付け加えた。


「・・・」


沈黙が訪れる。

皆が俯き、眠り続けているらしいを心配する。

そして、それと同時に、先ほどの骸の言葉を心の内で反芻する。

嫌悪感に苛まれる者、嫉妬心に狂いそうになる者。

そして、ボンゴレ10代目である沢田綱吉が、口を開いた。


「とにかく今は、の無事を祈ろう。そして、皆は体を休めてほしい。

きっと、の目が覚めたときに皆が疲れていたら、悲しむ」


その言葉を受け、動き出す、各々が一人になりたい気分でもあったのだ。

皆が出て行き、最後にリボーンとツナが残った。


「ツナも休んでおけ」

「うん、ありがとう。…リボーンも」

「そうだな」


言葉を交わすが、どちらも動かない。


「…思ってしまったのは、やっぱり悪いことなのかな」

「自分勝手なことだな」

「でも、それでも、やっぱり彼を羨ましいと思ったんだ」

「そうだな、それは、仕方の無いことだ」


今更それを後悔してなんになる。

そして、それを反省する者だって、いないのではないか。


「うん、そうだね。そうだ」


ツナが一人、呟く。

それは、自分に言い聞かせているようだった。

ツナは部屋を出て、自室へ向かう。

リボーンは、無人になった部屋を見渡し、明かりを消した。



始まりは4日前に遡る。








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