その日は朝からどことなく浮かれていた。

一週間ほど帰省すると言い、実家へ戻ったが帰ってくる日だったからだ。

ツナは、を迎えるためいつもより少し豪華な夕食を用意した。

いつもは付き合いのよくない雲雀も、今日は居た。

そして、の帰りを告げる、ハルの元気な声が響いた。


 × × ×


「ただいまー。皆、元気にしてた?」


小さめのキャリーケースを持ったが入ってくる。


「よく帰ってきたな、会いたかったぞ」


最初に出てきたのはリボーンだった。

私も会いたかったよーと言うの手から、さり気なくキャリーケースを取る。


「別に大丈夫だよ、これくらい…」

「そんなに遠くはないといっても、疲れただろう」

「ありがとう」


労いを見せるリボーンに、は嬉しそうな笑顔を向けた。

廊下の奥からファミリーが集まってくるのが見える。


、おかえり」


皆が声をかける。

は一つ一つに反応を返しつつ、リボーンの後を付いていく。

リボーンがキャリーケースを持ったまま、広間に入った。

も続いて入ると、そこにボンゴレファミリーの中核メンバーがいた。


「おかえり!


山本が手を挙げ、快活に笑った。

は勧められるままソファーに腰を下ろす。


「で、、土産はねーのか?」


キャリーケースを置いたリボーンは、に向き直った。

は、その言葉を聞き、気まずそうに視線を泳がし、言葉を濁した。


「いや、それが、その、ね…ごめんなさい」

「お土産なんて、が帰ってきてくれればそれが一番のお土産ですよ」

「ありがとうございます」


しばらく、皆で久しぶりの歓談が続いた。

の実家はイタリアの郊外にあり、のどかな所である。

街並みは相変わらずだったことや、電車の窓から見えた風景。

他愛もない話をする。

一息ついた頃合に、が立ち上がった。


「あ、そろそろ荷物片付けてくるね。えっと、夕食はいつもの時間でいいのかな?」

「ああ」

「じゃあ、またそのときに」


そう言い、キャリーケースを持ち部屋を出る。

ドアが、閉まった。


「・・・」

「なんか、元気なかったですね」


ポツリと、ランボが呟いた。

その場にいた全員が、相槌こそ打たなかったが、沈黙でそれを肯定した。


 × × ×


私は、自室のドアを開けた。

キャリーケースを放り出し、ベッドに飛び込む。

私はちゃんと笑えていただろうか。

…自信がない。

拳に力を込めて、布団を握り締めた。


「…っ」


泣きそうになるのを必死に堪える。

ダメだ、この後食事に行かなくてはいけない。

泣きはらした顔など、見せてはいけない。

ここは、こんなにも居心地がいい。

あまりにも、居心地がよすぎて、思わず心が緩んでしまう。

ダメだ、負けちゃ、ダメ。

そう自分に言い聞かすが、段々と意識が曖昧になる。

頭がフワフワする。

唇が、勝手に動きそうになる。

私は、顔をしかめて全身に気合を入れるが、尚も抵抗し口が開く。


「全部、壊シテシマオウカ」


私の声が、搾り出したように掠れた声が口からでる。

嫌だ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

私は体を丸めて蹲った。








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