「ここが応接室だ」


「・・・さっそくかよ」


俺の呟きは、やはり誰にも届くことはない。

獄寺君、山本、リボーン、さん、そして俺の五人は今、応接室のドアの前に立っている。

まだ、学校案内は始まったばかりだ。

応接室よりも先に案内すべき教室があるんじゃないだろうか。

職員室とか、医務室とか、トイレとか…

いや、そんなことよりも!


「リボーン、ここは、やめた方が…いくらなんでも、いきなりみのりさんに」


リボーンの思惑は大体分かる。

きっと、順にリボーンのファミリー候補に会わせていくつもりなんだ。

でも、いくら、なんだって

いきなり雲雀さんは、ないと思う


(いや、俺が怖いだけなんだけどさ)


そう思いつつ、さんの顔を見る。

さんの顔は、至って涼しげだ。

さっきの獄寺君や山本への反応を見る限り、きっと雲雀さんのことも既に知っているに違いない。


「ここにいるのが、雲雀恭弥だ」


なるほど、と頷いてドアに手をかけるさん。

それを見て、獄寺君が慌てる。

応接室にさんを先陣きらせるわけにはーとか言っている声は、さんには届かないみたいだ。


「失礼します」


さすがはさん、礼儀正しく、静粛にドアを開く。

ドアのを開けてすぐ目に入るソファーに雲雀さんが座っていた。

その顔は俺たちを見た途端、不機嫌そうに歪む。


「初めまして、私はと申します。雲雀恭弥さん」


柔らかな微笑を作って、ゆっくりとお辞儀をするさん。

と、その姿を雲雀さんが一瞥したかと思った次の瞬間

雲雀さんの姿がソファーの上から消えた


「ツナ!」


そう叫ぶ山本の声とほぼ同時に


ガキンッ


と鈍い音がした。

ゆっくりと、視界を上げると俺の頭頂部目掛けて振り下ろされたトンファーと、それを防いでいる棒のようなものがあった。

トンファーを持つ雲雀さんの目は、その棒の持ち主に注がれていて…俺もその目線を辿る。

そこには、にこやかなさんがいた。


「お話には伺っていましたが、随分と突然で少々驚きました」


そんなさんの言葉には答えず、雲雀さんはトンファーを引く。


「君、強いんだね」

「雲雀さんが、力を抜いていらっしゃったからだと思いますけど」


えへへ、と照れたように笑うさんがなんだか凄く可愛かった。

って、そんなこと思ってる場合じゃないんだけど。


「じゃあ、本気で戦ってみようか?」

「悪いけど、今日は顔見せだけなんでな、これで失礼するぞ」


機嫌がよさそうに笑って、トンファーを構えてさんを見据えた雲雀さんに、リボーンが制止をかける。

雲雀さんは、納得のいかなそうな顔をしたけど、既に応接室から出て行こうとしているさんを見て諦めたようだった。


「君、名前は?」

「え?」

「名前」

「あ、はい、です」

「ふーん」


ソファーに座りなおす雲雀さん。

応接室のドアを閉める瞬間にチラリと覗き見たその顔が、楽しそうに笑っていたのは気のせいじゃないと思う。








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