行政特区日本の開設記念式典が、今日、行われる。 朝早くに家を出るルルーシュを外で待つ。 今まで何度、朝早く出掛ける彼をこうやって待っただろう。 私はいつも、彼を待って、そして見送る。 見送る為に、彼を待つ。 いつか、私も一緒に、彼と歩いていける日が来るのだろうか。 大切なもの クラブハウスから出てくるルルーシュの姿が見え、私は駆け寄った。 「おはよう、ルルーシュ」 「、昨日は結局ナナリーの所に行かなかったんだって?」 「ごめん、ちょっと用事を思い出して引き返したの。ルルーシュは、どうだったの?」 「ああ。シャーリーが来なかったんだ」 「そうなんだ……」 結局、シャーリーと会わなかったことは知っていた。 シャーリーはこのまま、何かに首を突っ込むつもりではないらしいので、私もこれ以上話題を続けるのをやめる。 「そういえば、昨日は俺に何か用があったんじゃないのか?」 「うん……ルルーシュに言いたいことがあって。今日も待ってた」 「何だ?」 「私、行政特区には参加しない」 「え?」 私の言葉が突拍子もなく、驚いたようにルルーシュが私の顔を見た。 すぐに先日の話題だと気付いたらしく「ああ」と納得する。 「そうか」 「私が今、一番居たいのは、日本人と共存できる場所じゃなくて、ルルーシュの傍なの」 「……」 ルルーシュは私の言葉をどう受け止めるべきなのか迷う。 恋愛感情に殊更鈍い彼に苦笑し、私はルルーシュの肩を叩いた。 「だから、私はルルーシュのやりたいようにやればいいと思うってこと」 「……、だけど、俺のやろうとしていることは――」 私の言葉に、躊躇ったような表情を見せた。 ルルーシュには珍しく、少し不安げで罪悪感が垣間見える。 自分の信念の為にやるべきことを迷っているのかもしれない。 「ルルーシュ。ルルーシュの一番大切なものは?」 「……」 「ナナリーちゃんでしょ」 「ああ」 「だったら、ナナリーちゃんの為に全力を尽くすルルーシュが、私にとって一番大切なものだから」 私はルルーシュの手をとる。 「何があっても、ルルーシュのこと待ってる。ルルーシュのことを想うよ」 「恥ずかしいことを口にするやつだな」 ルルーシュの後ろから、C.C.が姿を現した。 ルルーシュの手を持つ私を見て、笑う。 いつもの嫌味な笑いではなく、少しだけ女らしさを見せるいつもより優しげな笑みだった。 「C.C.も、行ってらっしゃい」 「ああ」 女らしさを見せたかと思えば、途端に凛々しい姿になる。 ルルーシュとC.C.を見送る私は、二人の姿が見えなくなるまでその場を動かなかった。 いつか私も、あの二人に並んで立てるだろうか。 待つだけで何も出来ない私をルルーシュはどう思っているのだろうか。 何も出来ない歯痒さ、それでも今は私にできることをするしかない。 私は身を返してクラブハウスへ入る。 ナナリーちゃんの部屋へ行くと、ラジオに耳を傾ける咲世子さんとナナリーちゃんがいた。 式典の始まりを告げるアナウンサーの声がラジオから聞こえる。 会場の様子を説明するアナウンサーは、もう日本人をイレブンとは呼ばない。 急に、会場がざわめきたつ音声がスピーカーから聞こえてきた。 ゼロが、会場に現れたのだ。 そして、ゼロとユーフェミア皇女殿下は二人で会場の奥へ消えた。 << ○ >> |