呆れきったルルーシュの声が私の胸に、今日一番の罪悪感を与えた。

ゼロの仮面を被ったまま、だけどその仕草から声まで、すべてはルルーシュそのものだ。


、お前……」

「ほんっとにごめんなさい! ごめんなさい!」

「状況が分かっているのか?」

「分かっているつもり、今は……。さっきまでは、その、分かってなかったかな」


盛大な溜め息。

彼の余計な手間を増やしてしまった自分が腹立たしい。

さっきまでの私に戻れるなら、正気になれと一発殴ってやりたい気分だ。

……しかし、時間を戻れるとしたら、私は学園を飛び出さなかっただろうか。

ルルーシュに会えない学園の中で、テレビを見て状況を把握して、お行儀よくしていられただろうか。

それに関しては、自信がない。


「後悔はしてるけど、反省はしてない、かな」

「まったくお前は……」


仮面の中の表情が見えない。

だけどその声に、怒りは含まれていないように感じた。










崩落と抱擁


















ガウェインの中に乗り込む。

二人分の座席の後ろには、もちろん人が乗り込むための装置は用意されていない。

動作に必要のない私は、ルルーシュの座る後部座席横に押し入った。

まるで本当にお荷物だと思わず溜め息。

ガウェイン内に入ったにも関わらず、ルルーシュは仮面を被ったままだった。


「ルルーシュ、仮面はずさないの?」

「ギアスの制御ができないからな」

「できないの?」

「ああ」


どうして、だとか、それで何が起こったのか、とか、次から次へと質問が浮かんでは飲み込んだ。

なんとなく、聞いてはいけない気がした。

ニュースで見た、ユーフェミア皇女殿下の姿と、学園祭の日に見た彼女の姿が交互にちらつく。


「もしかして――」

「なんだ?」

「……ユーフェミア、様、は……」

「……」


重たい沈黙が、その場を包んだ。

私は、言ってはいけないことを言ってしまったのだと気付く。

常軌を逸したユーフェミア皇女殿下の姿、ギアスという能力、そしてルルーシュの人柄。

納得のいく説明がつくとしたら、それしかない。


「本意じゃなかったんだよね? あんなこと……」

「大切なのは結果だ。ユーフェミアのおかげで黒の騎士団の勢力と団結は確固としたものになった。最も有効な手段だ」


仮面の向こうにあるルルーシュの顔が見えない。

それでも、彼の全身が、私に真実を告げる。


「馬鹿だね、ルルーシュ。つかなくてもいい嘘、つくなんて」

「嘘なんて、ついていない」


傍らから、ルルーシュの体を抱きしめた。

驚くほど細い彼の体が、私の腕の中におさまった。

抵抗しない彼の仮面をゆっくりと持ち上げる。

驚くほど簡単に、彼の仮面は私の手に包まれて外れた。


「目は見ないから」


後ろから彼の肩に顔を埋める。

気付かないほど小さな震えが私に伝わってきた。


「私じゃ、共犯者にはなれないのかもしれないけど……」


C.C.が私を見る。


「だけど私は、それでもルルーシュの傍にいるよ、傍にいたいよ」


ルルーシュの返事はない。


「傍にいても、いい?」


答えは返ってこない。

だけど強く彼を抱きしめた私の腕が、振り払われることはなかった。









ガウェインがトウキョウ租界を見下ろす。

租界全域の通信チャンネルで、ゼロがブリタニアへの降伏を促す。

最終通告をゼロが言い渡す。

下には見たこともない程のナイトメア。

前方で赤く光る租界にも、見たこともない程のナイトメア。

初めて目にする光景は、とても壮大、だけど悲しい。









ルルーシュの覚悟と望みが、O時を合図に動き出す。

地震対策で積み上げられた階層構造。

トウキョウ租界の地盤が、大元から崩れだす。

大きなビルが、道路が、そして隊列を組んだ多くのブリタニア軍勢が、崩れ落ちてゆく。































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