ルルーシュが指示を出すのを聞きながら、私は自分の体を支えた。 最初の作戦が成功した今、黒の騎士団は優勢に立ったようだ。 ガウェインが放つハドロン砲が、多くのナイトメアを破壊する。 戦いに関しては素人の私でも分かる。 ガウェインを取り囲む多くのナイトメアが、一瞬でいなくなる、その威力。 地上では他のナイトメアたちがぶつかっている。 ルルーシュの出す指示は、他方を正確に把握した的確な判断ばかりだった。 今まできちんと彼の才能を目の当たりにした事がない私は、正直驚く。 私の想像なんて遠く及ばない彼の能力。 彼がゼロであれた最大の理由。 そしてその指令を聞くことなく、彼の意思を瞬時に判断し、動作に移すC.C.の姿。 息の合った二人が、まるで一人の人間のようにガウェインを動かす。 体を支え、せめて邪魔にならないよう隅に避けておくだけの私。 ルルーシュはこの後、アッシュフォード学園に司令部を構えるつもりらしい。 その時に私を降ろす予定だ。 ガウェインが移動を開始する。 「、ちゃんと掴まっておけ。危ないぞ」 「うん、大丈夫」 ルルーシュが私を見ずに言った。 護衛の占拠 アッシュフォード学園にガウェインが降りる。 ルルーシュがゼロの仮面をつけた。 「、他の奴らに見つからないように学園内に入れ」 「う、うん」 「それから、頼む」 「え?」 「ナナリーの、傍にいてくれ」 「……うん、ごめん」 「いや」 ルルーシュがガウェインから降り、黒の騎士団のメンバーに指示を出し始める。 その後からC.C.の影に隠れるように私もガウェインから降りた。 物陰に隠れながら、走ってその場を離れた。 背後からルルーシュの指示に頷き、行動を開始する黒の騎士団のメンバーたちの足音が聞こえた。 私はクラブハウスの生徒会室に向かう。 必死に走り、クラブハウスに駆け込む。 生徒会室の明りが見えた。 駆け込んでドアを開く。 「!?」 テレビを見ていたリヴァルとミレイ会長、シャーリーが声をあげる。 その声でナナリーちゃんも私の方を向いた。 全員の無事な姿を見て安堵する。 「ど、どうやって――」 「あ!」 シャーリーの声をリヴァルが遮る。 テレビにニュースキャスターが慌てて立ち上がる姿が流れた後、ノイズが走った。 「これで、全部の放送局が……」 ミレイ会長がテレビを見て呟く。 どこのチャンネルも、同じ様子のようだ。 先ほどまでルルーシュの指示を聞いていた私はすぐ分かる。 全ての放送局を黒の騎士団がおさえたのだ。 「手を上げて後ろを向け! この学校は、俺たち黒の騎士団がもらった!」 突如、生徒会室に武装した男達が入ってくる。 銃を構えた男は銃口をミレイ会長に向けた。 その銃口の前にリヴァルが手を広げて立ちはだかる。 「銃を下ろせ」 男は、ミレイ会長を庇うリヴァルの姿を馬鹿にしたように鼻で笑った。 「俺が、皆を守る!」 「ああ、そうかい!」 リヴァルの言葉を聞き、男が銃を振り上げる。 殴られる、と覚悟したリヴァルが目を閉じ、私の足は思わずリヴァルの方へ向かった。 「やめろ!」 制止の声が響き、その銃が振り下ろされることはなかった。 「手荒なマネはするなと言っただろう」 ルルーシュ――ゼロが現れる。 後ろにはおおきなサングラスをつけ、銃を持った女性が付き添っている。 「この学園は、我々黒の騎士団が重用し司令部として使用させてもらう」 「拒否権は、ないのよね」 「君たちの身の安全は保障しよう」 ミレイ会長の言葉にゼロが答えた。 彼の意図が分かっている私は、そっとナナリーちゃんに寄り添う。 「そんなの、信じられるかよ。戦争してんだろ、俺たちブリタニアと」 「リヴァル。お願い、言うとおりにして」 ゼロの後ろに立っていた女性が、一歩進み出てサングラスをはずす。 その顔は、見知った彼女――カレンだ。 「カレン?」 「……そっか、そういうことか……」 驚いたように声を出すシャーリーと、カレンの事情を知っているらしいミレイ会長の呟き。 リヴァルもナナリーちゃんも、驚いたまま声が出せないようだった。 私の予測は当たっていたわけだ。 銃を構え、ゼロに付き従う彼女の姿。 驚きではなく、怒りでもなく、悲しみでもなく――羨ましいという感情が、私の中にこみ上げた。 「約束してくれる? 私たちだけじゃなく、学園の生徒全員に手をださないって」 「男子寮も女子寮も、外には出られないようにしたから、大丈夫だと思う」 生徒会長であり、理事長の孫でもあるミレイ会長の言葉にカレンがはっきりと返事をする。 「ねえ、私に何をしたの?」 「え?」 しかし突然のシャーリーの言葉には、不思議そうな顔をした。 「私がどれだけ怖かったか、二人でやったんでしょ? 私に、何か」 「は?」 「酷いよ、酷い!」 シャーリーはやはり、何かに気付くか、思い出しているのだと確信した。 けれど、その場で事実を確認できたのは、きっと私しかいない。 反応からみて、カレンは全く関与していなかったようだし、きっとルルーシュも分かっていないだろう。 しかし、この場でシャーリーに私が何か言うわけにもいかず、私はただ怯える彼女の手を握った。 ショックを受け、悲しそうに顔を伏せたシャーリーが私の手を固く握り返した。 「ゼロ! ランスロットが!」 慌てたようにまた新しい黒の騎士団の男が生徒会室に入ってきた。 ランスロットという単語に、その場の全員が反応する。 ゼロの予想通りだと言わんばかりの声。 「やはり来たか」 生徒会室を出るゼロの背中に付いて歩くカレン。 それが当然のことであるような様子のゼロ。 先ほどガウェインの中で、自分の体を支えてルルーシュを見ることしかできなかった自分の姿を思い出す。 私はナナリーちゃんの車椅子に手をかけ、強く握った。 << ○ >> |