そして 銃声が響いた。 二人の間に飛び出した私の、顔のすぐ横をルルーシュの放った弾が通り過ぎた。 髪が、散った。 スザクの撃った弾は私に当たらず、ルルーシュの持つ銃身を貫いた。 私の姿に驚いたルルーシュの手から、銃が弾き飛ぶ。 その隙を見逃さずスザクがルルーシュに飛び掛る。 「ゼロ!」 「こいつはルルーシュだ!」 カレンが思わず駆け寄ろうとすると、スザクがルルーシュを地面に押し付けたまま銃口をカレンに向け怒鳴った。 足を止め立ち尽くすカレン。 私は先ほどまで自分がいた場所に銃が転がっているのを確認し、駆け寄ろうとした。 「!」 スザクの怒声で身を止める。 スザクが、今度は私に銃口を向けていた。 転がっている銃に手は届きそうにない。 スザクはルルーシュの胸からサクラダイトを取り去る。 カレンはルルーシュの姿とスザクの姿、そして私を見て、走り去った。 「ゼロ、君を終わらせる」 「やめて」 今にも駆け寄りそうな私を見て、スザクはルルーシュに銃口を向けた。 「、俺はルルーシュを撃てる。今、見ただろう」 ルルーシュに銃を向けたまま、スザクはルルーシュを押さえた。 無理やりスザクに連れられるルルーシュだが、銃口を向けられていてはルルーシュは勿論、私も動けない。 「お願い、スザク、やめて」 「無理だ」 スザクがしっかりとした足取りで洞窟を出て行く。 私へすらも、少しの隙を見せようとしない。 「、後で誰かを迎えによこすから」 「いらない、スザクからの迎えなんて」 「……」 洞窟を出て行くスザクは、少しだけ寂しそうな顔をして、ランスロットに乗り込んだ。 洞窟に一人残された私は、ぼんやりと、立ち尽くした。 力なく、足が進む。 洞窟の奥へ入り、ルルーシュが調べようとしていた岩壁に触れる。 何も起こらない。 この向こうにナナリーちゃんがいるかもしれないのに、私では何もできない。 何も、なくなってしまった。 何もかも、なくなった。 私が今からやらなくちゃいけないことは、何? ルルーシュを助ける為に、やらなくちゃいけないことは何? 最後に見たルルーシュの笑顔を取り戻さなくては。 もう一度、違う、一度なんかじゃ足りない。 彼の為に、彼の傍に、彼のものに――。 呆然と膝を折る。 この無力で小さな手に何が掴めるというのか。 うずくまり、岩壁に背をつけた。 どれくらい時間が経ったのか分からない。 外が暗くなってきたことだけが、上からの光と、入り口の様子で分かる。 ざり 誰かが、地面を踏む音がした。 ほんのりと明るい夜空を背景に、洞窟の入り口に細いシルエットが立った。 「ルルーシュ?」 「残念だったな」 私の希望に満ちた声に答えたのは、淡々とした女性の声。 そのシルエットが私の方へ歩いてきた。 その姿は、C.C.だ。 「C.C.……」 「、酷い顔だな」 呆れたように笑い、C.C.は周囲を見た。 「何があった?」 私の前に屈み、顔を覗き込む。 優しいC.C.の声が、じわりと胸に染みた。 涙を流し始めた私の頭をゆっくりと撫でる。 「、学園に戻ろう」 C.C.の声に、首を振る。 「お前はまた……」と溜め息をつくC.C.の顔を見上げる。 「私に、ナイトメアの操縦の仕方を教えて」 C.C.は、ぽかんと私の顔を見た後、意地悪く笑う。 私はそれに、精一杯強がって笑ってみせた。 << ○ >> |